戦国ビッチピンボール6

特集

ウクライナ侵攻

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から1年。長期化する戦闘、大きく変化した国際社会の行方は……。

特集一覧

寺島実郎さんが語る中東情勢 「5年、10年先に力学は変わる」

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
インタビューに答える日本総合研究所の寺島実郎会長=東京都千代田区で2023年12月4日、手塚耕一郎撮影
インタビューに答える日本総合研究所の寺島実郎会長=東京都千代田区で2023年12月4日、手塚耕一郎撮影

 「今こそ日本外交の基軸が問われている」――。イスラエルとイスラム組織ハマスによるパレスチナ自治区ガザ地区での戦闘が激しさを増す中、日本総合研究所会長の寺島実郎さんはそう語る。イスラエルや米国に長く滞在し、中東問題に詳しい寺島さんに、なぜイスラエルがあれほどパレスチナをねじ伏せようとするのか、日本は何をすべきかを聞いた。【聞き手・宇田川恵】

 ――ちょうど1年前に出版した著書「ダビデの星を見つめて」で、寺島さんはイスラエルが地域大国化し、中東情勢が新たな局面に入ると指摘していました。現在の混乱を予見していたかのようです。

 ◆米同時多発テロ(9・11)以降、イスラエルは中東で独り勝ち状態でした。最大の脅威だったイラクのサダム・フセイン元大統領はイラク戦争で葬り去られ、次の強敵であるイランは核開発問題で封じ込められています。いずれも自分の手を汚さず、米国を利用するような形で脅威を排除しました。一方で軍事技術大国に発展して豊かになり、今や1人当たり国内総生産(GDP)は日本を上回ります。

 さらに米国の仲介でアラブ首長国連邦(UAE)など一部のアラブ諸国と国交を正常化し、アラブの分断も進めました。こうして自信を強め、高圧的になるイスラエルが、地域に危ういものをもたらすという予感がありました。

「マサダ・コンプレックス」が関係

 ――今回のイスラエルの姿勢には、ネタニヤフ政権の特異性が影響していると言われますが。

 ◆なぜイスラエルがこんなにもパレスチナをねじ伏せようとするのか、世界の世論を敵に回してまで、なぜあんなに居丈高に振る舞うのか。日本人にはなかなか理解できませんが、それはユダヤ人の深層心理にある「マサダ・コンプレックス」が深く関係しています。

 マサダとは古代、ローマ軍に追い詰められたユダヤ人が集団自決した場所です。現在のイスラエルはアラブ諸国という「アラブの海」に囲まれており、油断しているとマサダの悲劇のように、いつ地中海に突き落とされるか分からない。ユダヤ人の多くはそんな強迫観念にとらわれているのです。

 さらに、今のネタニヤフ政権は昨年末、極右政党「ユダヤの力」と連立を組むなど、かなり右傾化が進んでいるうえ、「ロシア帰りのユダヤ人」という意識が強い人が存在感を持っています。19世紀後半、ロシアでは激しいユダヤ人の排斥「ポグロム」が起き、これが「祖国であるカナンの地に帰って建国しよう」というシオニズムのきっかけになりました。その後のナチス・ドイツによる「ホロコースト」も含め、イスラエル建国のエネルギーとなり、この歴史を土台とし、敵に対する憤りと闘争心が特に強いのが現政権なのです。

「見下す空気」がウク…

この記事は有料記事です。

残り2276文字(全文3391文字)

【ウクライナ侵攻】

時系列で見る

関連記事

あわせて読みたい

マイページでフォローする

スポニチのアクセスランキング

現在
昨日
1カ月

ニュース特集