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「世界複合遺産」登録を 作家・登山家の根深誠さんがみる白神山地

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インタビューに応じる根深誠さん=青森県弘前市の自宅で2023年12月9日、田村彦志撮影 拡大
インタビューに応じる根深誠さん=青森県弘前市の自宅で2023年12月9日、田村彦志撮影

 青森、秋田両県に連なる世界最大級のブナ原生林、白神山地が今月11日、世界自然遺産登録から30年の節目を迎えた。登録以前に林野庁が計画・着工していた「青秋林道」(約30キロ)を巡って湧き起こった反対運動を当時、青森側で主導した作家で登山家の根深誠さん=青森県弘前市=が、このほど毎日新聞のインタビューに応じた。根深さんは、白神山地周辺の自然や景観、世界文化遺産と合わせた「世界複合遺産」への登録を提唱し、秋田側の入山規制にも疑問を投げかけた。【聞き手・田村彦志】

 ――青森側で「青秋林道に反対する連絡協議会」が結成されたのは、着工翌年の1983年4月でした。

 ◆私はその前から白神山地でテントを張ってイワナを釣ったり、たき火をしたりし、高校時代は縦走もした。70年代後半、青森県自然保護課に勤めていた高校時代の登山仲間から林道の建設構想を知らされたのをきっかけに、「白神山地のブナ林が分断され、水源が危ぶまれる」と危機感を抱き、地元山岳会などで「連絡協議会」を立ち上げた。

 自然保護・保全関係の法律に詳しく「青森県自然保護の会」会長だった弘前大の故奈良典明教授(生物学)が会長となり、私が事務局長を担当した。

 ――反対運動は秋田側にもありました。

 ◆秋田の運動はニュースでも知っていたので、「白神山地のブナ原生林を守る会」理事長の故鎌田孝一さん=秋田県藤里町=に電話して共に闘っていくことにしたが、振り返ってみると、考えが合わず分裂状態だった。

秋田県と青森県にまたがる世界自然遺産「白神山地」=2023年11月9日、本社機「希望」から 拡大
秋田県と青森県にまたがる世界自然遺産「白神山地」=2023年11月9日、本社機「希望」から

 運動を起こしてから、自宅玄関の窓ガラスを割られるなど野蛮なこともあった。会社勤めをしていたが、「このまま会社にいて運動をやめる」「運動も成功させ会社にも残る」「運動を優先し会社を辞める」の三つの選択肢しかなく、結局、会社を辞めた。反対運動は本当に苦しかった。

 しかし、90年に白神山地が森林生態系保護地域に設定され、林道計画は消えた。「これでブナ林が守られる。生息する鳥や動物が守られる」と思い、本当にうれしかった。

 白神山地を水源とする青森県鰺ケ沢町の赤石川流域の住民たちは運動を自分たちのこととしてとらえ、異議意見書集めに協力的だった。忘れられない。

 ――93年12月、白神山地は鹿児島県の屋久島とともに世界自然遺産に登録されました。

 ◆ユネスコ(国連教育科学文化機関)は白神山地を世界遺産に登録するに当たって付帯条件を付けた。それは「面積の拡大」だ。

 住民生活の基盤を成している白神山地に連なる山や川、海。例えば、景勝地の十二湖(青森県深浦町)や沿岸を大事にしていくためにも、津軽国定公園の一部や、江戸時代の紀行家、菅江真澄が訪れて桃源郷のようだと評した集落「手這坂(てはいざか)」(秋田県八峰町)なども遺産地域に追加登録して面積を広げ、世界文化遺産の「北海道・北東北の縄文遺跡群」と合わせて「世界複合遺産」に登録し直してもらったらどうか。

世界遺産地域の赤石川(青森県鰺ケ沢町)を修学旅行で訪れた埼玉県飯能市の自由の森学園高3年の生徒たち=2009年夏(根深誠さん提供) 拡大
世界遺産地域の赤石川(青森県鰺ケ沢町)を修学旅行で訪れた埼玉県飯能市の自由の森学園高3年の生徒たち=2009年夏(根深誠さん提供)

 世界複合遺産そのものはあまり知られていないが、地域住民がビジョンを持って進めば登録は可能だと思う。そのことは林道建設の反対運動が成功したことで証明されている。

 ――遺産地域の核心地域への入山を巡っては、「原則禁止」とする秋田側の対応に、地元からも緩和を求める声が出ています。

 ◆白神山地が世界遺産に登録されて、入山が規制された。私はこの規制に反対した。ユネスコの担当者に問い合わせたところ、「管理計画というものは一般の人たちが楽しめるような仕組みをつくることですよ」と丁寧な回答をいただいた。

 同じフィールドなのに青森側は届け出制(で入山を認めている)。取り扱いが違うのは、おかしな話だ。古くから利用されてきた森で、なぜ一般の入山が禁止されなくてはならないのか。山を利用してきた人たちの文化や歴史(への視点)が抜け落ちた判断としか思えず、世界遺産としての白神山地を守る理念にもそぐわない。

 ――現在、市民団体「津軽百年の森づくり」代表としてブナの植樹に取り組んでいます。

 ◆反対運動を起こした者として責任をどう果たしていくか。地域社会のあり方を考えた時、白神山地を象徴するブナを植え続けることだと思い至った。津軽一円の街なかや里山にブナを植えていこうと考え、実践している。

ねぶか・まこと

 弘前高、明治大で山岳部に所属。大学の先輩で登山仲間だった世界的な冒険家、故植村直己さんの指導も受けた。ヒマラヤなどにも遠征し、国内外の山々と生活文化に詳しい。「森を考える~白神ブナ原生林からの報告」など著作多数。76歳。

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