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大麻の危険性を知る医師が「合法化を検討すべきだ」と考えるワケ

谷口恭・谷口医院院長
タイ・バンコクのカオサンロードにあるビルの地下1階。なんとフロアのすべての店舗が大麻ショップとなっていた=2023年7月、筆者撮影
タイ・バンコクのカオサンロードにあるビルの地下1階。なんとフロアのすべての店舗が大麻ショップとなっていた=2023年7月、筆者撮影

  日本大学アメリカンフットボール部の部員の大麻所持が波紋を呼び、部存続の危機にさらされています。本稿執筆時点では「廃部するか否かについては継続審議中」と報道されていて、廃部はやむを得ないという声がある一方で、廃部に反対する署名が多数集まっていると聞きます。問題のポイントは、現在の日本において大麻所持をどれくらい悪質ととらえるかという点でしょう。実は大麻入手は国内でも難しくありません。今回は大麻の危険性について実例を紹介しながら、それでも、合法化を検討すべき段階に入っているのではないかという私見を述べたいと思います。

パーティー参加者の3割が「使用経験あり」

 大麻取締法違反の検挙者数は、統計上は最近になって増えているようですが、これは「検挙者数」であって「経験者数」を表しているわけではありません。大麻は、覚醒剤のように中毒症状が(ほとんど)起こりませんから、摂取しすぎて錯乱したり翌朝に無断欠勤したりすることはなく、また、依存性が低いために他の違法薬物のように入手のために知人にうそをついたり借金を重ねたりすることもないため、経験者がいても社会的に目立たないのです。

 仮に「あなたには大麻の経験がありますか」という聞き取り調査を実施しても、正確な経験者数はわからないでしょう。「はい」と答えれば逮捕の可能性があるわけですから、行政や大学が主体の調査であれば正直に答える人はいません。

 実際にはそれなりの日本人に大麻の経験があるはずです。以前も紹介した論文では、2010~11年に東京の四つのレイブパーティー(ダンス中心のパーティー)会場で若者に薬物使用経験を尋ねています。調査に協力してくれた若者300人のうち98人(32.7%)、つまり3人に1人が大麻の経験があると回答しました。レイブパーティー参加者という限られたグループを対象にしたこの研究には偏りがあるという指摘はあるでしょう。それでも日本でも意外に広がっているといえるのではないでしょうか。

 米国人を対象とした調査では、たばこの経験者が約30%なのに対し、大麻経験者は48%とほぼ2人に1人です。8月のコラムではタイのバンコクでは大麻ショ…

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谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援する代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。 無料メルマガ<>を配信中。